愛称はジェリー
博物館の名前は町民から募集した。その結果、大人からは「ふるさと館」子どもたちからは「ジェリー」が多くよせられた。
「ジェリー」が多かったのは既にある町の文化センターが「TOM」と呼ばれていたからである。子ども達はアメリカのTVマンガ「トムとジェリー」を思い出し、新しい博物館を「ジェリー」と呼びたかったのだ。
相談を受けた私は即座にそれでいいと答えた。それはこれからの博物館は子どもたちのためにあると考えていたからだ。日本では博物館はまだまだ市民権を得ていない。博物館を過去の物として博物館へ行くことが日常化していないのだ。だから私の経営する博物館は町民に親しまれなければならない。子どもたちが自分たちに一番身近なマンガの主人公の名を選んだということは早くも今日的な博物館への第一歩を踏み出したことを意味する。
それに私自信、マンガのジェリーが大好きだ。
館長としての私は博物館の経営にあたって次の理念を定めた。
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博物館を町民のサロンにする。
博物館は町民のものである。だから見学だけではなく施設も自由に使うべきだ。
余暇には博物館に来て、学芸員と団欒し、研究してもらいたい。
お年寄りには子どもたちに昔を語ってもらいたい。 |
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博物館を情報発信に基地にする。
上湧別世界に知らせ、世界の情報を博物館を通して町民に伝える。これからの博物館は歴史に根ざした未来創造の中核になるべきだと考えるからである。
そこで博物館の言葉を、
「過去を聴こう、未来を視よう。」
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と定めた。「聴く」という漢字はよく考えながら聞くという意味があり、「視る」は透徹することである。
つまり客観的に未来を予測することである。
この博物館の言葉は誰よりも私たち博物館の職員が実行しなければならないだろう。
私たち自身がすぐれた歴史の分析者であり、歴史の教訓の中から真理を引き出して間違いのない未来像を形づくる能力が必要である。
私はしばらくの間この芸術性あふれた博物館の中で自由で柔軟な時には夢想的に行動しようと思っている。それが自らの想像力を養う糧であると信じながら。 |